この記事を書いたのは
医学博士、日本産科婦人科学会認定 産婦人科専門医、日本生殖医学会認定 生殖医療専門医・指導医、母体保護法指定医、検診マンモグラフィ読影認定医師、乳がん検診超音波検査実施・判定医師
はじめに
人工授精を続けても妊娠に至らないと、「あと何回続けるべきか」「今、体外受精へ進まないと遅いのか」と迷うことがあります。
人工授精に絶対的な回数上限はありませんが、一般的には3〜6回、特に5〜6回程度を一つの区切りとして治療方針を見直します。人工授精で妊娠に至る方は比較的早い回数に集中し、同じ方法を続けても1周期あたりの妊娠率が上がるわけではないためです。
ただし、すべての方が6回行うべきという意味ではありません。女性の年齢、卵巣予備能、不妊期間、卵管の状態、調整後の精子数などによっては、1〜3回で体外受精へ進む場合や、最初から人工授精を行わない場合もあります。
人工授精は5〜6回が一つの目安
こども家庭庁の専門家解説では、人工授精は一般的に3〜6回程度行われ、妊娠に至らない場合は体外受精を勧められることが多いと説明されています。
東京ウィメンズクリニックの人工授精ページでも、医学的には5〜6回を一区切りとして、それ以上続けるか、次の治療へ進むかを検討する考え方を案内しています。
大切なのは、6回という数字を機械的なゴールにしないことです。人工授精を行う前提条件が整っているか、治療に使える時間と期待できる効果が釣り合っているかを確認します。
回数だけで決めない方がよい理由
同じ「人工授精3回目」でも、次の条件によって判断は変わります。
- ✓女性が30歳なのか40歳なのか
- ✓卵管が両側とも通っているか、片側のみか
- ✓精子を洗浄・濃縮した後の運動精子数
- ✓自然排卵か、排卵誘発が必要か
- ✓不妊期間が1年なのか、数年なのか
- ✓AMHや胞状卵胞数からみた卵巣予備能
- ✓これまでの妊娠・流産歴
- ✓希望する子どもの人数
人工授精の回数は判断材料の一つであり、それだけで治療方法を決めるものではありません。
年齢別に考える見直しの目安
| 状況 | 考え方の例 |
|---|---|
| 比較的若く、検査結果に大きな問題がない | 3〜6回程度を目安に結果を見ながら検討 |
| 35歳以上 | 6回を待たず、数周期ごとに時間の使い方を見直す |
| 38歳以上 | 卵巣予備能や不妊期間によって、より早い体外受精を検討 |
| 40歳以上 | 人工授精1回あたりの妊娠率低下を踏まえ、早期にARTを相談 |
これは一律の基準ではありません。年齢だけで治療を決めるのではなく、検査結果と希望を合わせて考えます。
回数を待たずに体外受精を検討するケース
両側卵管閉塞がある
人工授精では受精が卵管内で起こるため、両側の卵管が完全に閉塞している場合は効果が期待できません。卵管を介さない体外受精が選択肢になります。
精子の数や運動率が大きく低下している
調整後に子宮へ注入できる運動精子数が非常に少ない場合、人工授精で卵子まで到達することが難しいことがあります。顕微授精を含む生殖補助医療を検討します。
卵巣予備能の低下が疑われる
AMHが低いことだけで妊娠できないわけではありませんが、治療に使える卵子数や時間を考える材料になります。年齢と組み合わせて、人工授精に何周期使うかを考えます。
不妊期間が長い
基本検査で大きな異常がなくても、不妊期間が長い場合は、人工授精では補えない受精・胚発育の過程に問題がある可能性も考えます。
本人たちが時間を優先したい
仕事、家族計画、希望する子どもの人数などから、妊娠までの時間を重視する方もいます。医学的な適応と、夫婦の価値観の両方を確認します。
もう一度人工授精を続ける前に確認したいこと
治療を変えることは、それまでの治療が無駄だったという意味ではありません。人工授精で得られた卵胞発育や精子所見などは、次の治療計画にも役立ちます。
体外受精へ進むと何が変わる?
人工授精では受精と胚発育を体内に委ねますが、体外受精では採卵後に、受精の有無や胚の発育を確認できます。卵管閉塞があっても、卵管を介さず受精・移植を進められます。
一方で、排卵誘発、採卵、胚培養、胚移植が必要になり、通院回数や身体的・経済的負担は増えます。保険診療には年齢と胚移植回数の条件があるため、治療を始める前に確認が必要です。
よくある質問
まとめ
人工授精は5〜6回程度を一区切りとして、体外受精へ進むかを検討することが一般的です。ただし、年齢、卵管、精液所見、卵巣予備能、不妊期間によっては、より早い段階で見直すことがあります。
大切なのは「6回終わるまで待つ」ことではなく、治療開始時から見直す条件を決めておくことです。次の一周期をどう使うか、医師と具体的に相談しましょう。
不妊治療や妊娠初期の経過には個人差があります。この記事の情報だけで治療の開始・中止、薬の変更、緊急性を自己判断せず、気になる症状や検査結果は担当医へご相談ください。
東京ウィメンズクリニックへ相談を検討している方へ
東京ウィメンズクリニックでは、これまでの人工授精回数だけでなく、年齢、検査結果、治療歴、ライフプランを踏まえてステップアップをご提案します。他院での治療歴が分かる書類をお持ちの場合は、初診時にご持参ください。
参考文献・参考サイト
- こども家庭庁「不妊治療って何をするの?」
https://funin-fuiku.cfa.go.jp/expert/14.html - 日本生殖医学会「人工授精とはどういう治療ですか?」
https://www.jsrm.or.jp/public/funinsho_qa10.html - 東京ウィメンズクリニック「人工授精(AIH)」
https://www.tokyo-womens.clinic/medical-services/artificial-insemination-aih/
最終閲覧日:2026年9月13日。制度・料金・診療内容は変更される場合があります。
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