この記事を書いたのは
医学博士、日本産科婦人科学会認定 産婦人科専門医、日本生殖医学会認定 生殖医療専門医・指導医、母体保護法指定医、検診マンモグラフィ読影認定医師、乳がん検診超音波検査実施・判定医師
はじめに
人工授精(AIH)は、採取した精液から運動性のよい精子を選び、排卵時期に合わせて子宮内へ注入する治療です。「人工」という名称ですが、子宮内へ注入した後、精子が卵管へ進み、卵子と受精し、胚が着床する過程は自然妊娠と同じです。
処置自体は通常5〜10分程度で、麻酔を必要としないことが一般的です。身体的負担は比較的小さい一方、卵管内で自然に受精する必要があるため、両側卵管閉塞や重度の男性不妊などでは別の治療が適することがあります。
人工授精の仕組み
自然な性交渉では、精子は腟から子宮頸管、子宮内を通り、卵管へ到達します。人工授精では、精液を洗浄・濃縮し、細いカテーテルで子宮内へ届けることで、精子が進む距離と子宮頸管の影響を減らします。
人工授精で補助するのは、主に「精子を子宮内へ届けるところまで」です。排卵された卵子を卵管が取り込み、卵管内で受精し、受精卵が子宮へ移動して着床する過程を直接操作する治療ではありません。
人工授精が検討されるケース
- ✓精子の数や運動率が軽度に低下している
- ✓性交障害や腟内射精障害がある
- ✓子宮頸管粘液の影響が疑われる
- ✓タイミング法を一定期間行っても妊娠に至らない
- ✓明らかな原因が見つからない原因不明不妊
- ✓排卵時期に性交渉を持つことが難しい
一方、両側卵管閉塞、重度の男性不妊、高度な排卵障害などでは、人工授精の効果が期待しにくいことがあります。年齢的な時間の制約が大きい場合も、体外受精を早めに検討することがあります。
人工授精のスケジュール
1. 月経開始後に治療方針を確認
自然排卵に合わせるか、内服薬や注射による排卵誘発を併用するかを検討します。排卵誘発を行う場合は、複数排卵による多胎妊娠や卵巣過剰刺激などに注意しながら進めます。
2. 排卵時期を確認
月経周期10〜12日目頃を一つの目安に、経腟超音波で卵胞の大きさを確認します。必要に応じて血液・尿中のLHなども測定します。卵胞の発育状況によって再診が必要になることがあります。
3. 実施日を決める
卵胞の大きさやホルモン値から排卵時期を予測し、人工授精の日を決めます。排卵を促すhCG注射や点鼻薬を使用する場合もあります。
4. 当日に採精・提出する
指定された方法と時間に合わせて精液を採取します。自宅で採取する場合の容器、保管、持参時間は、必ず医療機関の指示に従ってください。
5. 精液を洗浄・濃縮する
精液から不純物などを除き、運動性のよい精子を集めます。東京ウィメンズクリニックの案内では、調整に約60〜90分を要します。
6. 子宮内へ精子を注入する
内診台で細いカテーテルを子宮内へ入れ、調整した精子を注入します。東京ウィメンズクリニックの案内では、注入手技は約5〜10分です。
7. 妊娠判定
実施から約2週間後が妊娠判定の目安です。排卵を促すためにhCG製剤を使った場合、早すぎる市販検査薬では薬剤の影響で陽性になる可能性があります。検査の時期は医療機関の指示に従ってください。
人工授精は痛い?
多くの場合、人工授精の痛みは内診と同程度か、ほとんど感じない程度です。麻酔は通常必要ありません。
ただし、カテーテルが子宮の入り口を通るときに違和感や軽い生理痛のような痛みを感じる場合があります。子宮頸管が狭い、子宮の向きによってカテーテルが入りにくいなどの場合には、痛みや少量の出血がみられることもあります。
強い痛みがある場合や、処置後に発熱、増悪する腹痛、多量の出血がある場合は医療機関へ連絡してください。
人工授精当日の過ごし方
処置後は通常、仕事や日常生活へ戻れます。激しい運動、入浴、性交渉などの扱いは医療機関によって異なるため、当日の指示を確認してください。
処方された黄体ホルモン剤などがある場合は、自己判断で中止しないでください。腹痛や出血があっても、それだけで妊娠の成否を判断することはできません。
妊娠率の目安
こども家庭庁の専門家解説では、不妊症の女性における人工授精1回あたりの妊娠率の目安は、40歳未満で5〜10%、40歳以上で3〜5%と紹介されています。
ただし、この数値はすべての方に当てはまるものではありません。年齢、卵管の状態、排卵の状態、調整後の精子数、不妊期間などによって異なり、妊娠率と出産率も同じではありません。
東京ウィメンズクリニックの人工授精費用
2026年9月13日時点の公式料金表では、人工授精の手技料は次のとおりです。
| 区分 | 人工授精の掲載料金 |
|---|---|
| 保険診療・3割負担 | 5,460円 |
| 自費診療・税込 | 27,000円 |
実際には、再診料、超音波検査、ホルモン検査、排卵誘発薬、注射などの費用が加わる場合があります。手技料だけで総額を判断しないようにしてください。
人工授精のリスクと注意点
人工授精そのものの身体的負担は比較的小さいものの、次の点には注意が必要です。
- ●カテーテル挿入に伴う痛みや少量の出血
- ●まれな感染
- ●排卵誘発を併用した場合の多胎妊娠
- ●排卵誘発剤による副作用や卵巣過剰刺激
- ●実施を重ねても妊娠に至らない可能性
治療を続ける際は、1回ごとの結果だけでなく、一定回数で方針を見直すことが重要です。
よくある質問
まとめ
人工授精は、洗浄・濃縮した精子を排卵時期に合わせて子宮内へ注入し、卵子と精子が出会う過程を補助する治療です。処置は短時間で身体的負担も比較的小さい一方、卵管の通過性や一定の精子数が必要です。
妊娠の可能性、続ける回数、体外受精へ進む時期は、年齢と検査結果によって異なります。治療開始時に「何周期を目安に見直すか」まで医師と相談しておきましょう。
不妊治療や妊娠初期の経過には個人差があります。この記事の情報だけで治療の開始・中止、薬の変更、緊急性を自己判断せず、気になる症状や検査結果は担当医へご相談ください。
東京ウィメンズクリニックへ相談を検討している方へ
東京ウィメンズクリニックでは、超音波や必要に応じたホルモン検査で排卵時期を確認し、人工授精を行います。タイミング法からのステップアップや、体外受精へ進む時期についてもご相談いただけます。
参考文献・参考サイト
- 日本生殖医学会「人工授精とはどういう治療ですか?」
https://www.jsrm.or.jp/public/funinsho_qa10.html - こども家庭庁「不妊治療って何をするの?」
https://funin-fuiku.cfa.go.jp/expert/14.html - 東京ウィメンズクリニック「人工授精(AIH)」
https://www.tokyo-womens.clinic/medical-services/artificial-insemination-aih/
最終閲覧日:2026年9月13日。制度・料金・診療内容は変更される場合があります。
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