この記事を書いたのは
医学博士、日本産科婦人科学会認定 産婦人科専門医、日本生殖医学会認定 生殖医療専門医・指導医、母体保護法指定医、検診マンモグラフィ読影認定医師、乳がん検診超音波検査実施・判定医師
はじめに
採卵を控えると、針を使う処置と聞いて痛みや麻酔、所要時間が不安になる方も多いでしょう。採卵は、経腟超音波で卵胞を確認しながら針を進め、卵胞液とともに卵子を回収する処置です。処置自体は短時間でも、準備と回復を含めると半日程度かかることがあります。
この記事のポイント
- ✓採卵前には食事・飲水・薬・来院時間の指示を守る
- ✓痛みと麻酔方法は卵胞数や施設方針で異なり、採卵前に確認できる
- ✓当日は運転・仕事を避け、強い腹痛、出血、発熱、息苦しさなどは連絡する
採卵は日帰りで行われることが多い処置ですが、身体への侵襲と麻酔の影響があります。当日の予定を空け、帰宅方法と緊急連絡先を準備しておくと安心です。
採卵日が決まるまで
排卵誘発後、超音波で卵胞の大きさ、採血でホルモン値を確認し、採卵日を決めます。
最終成熟を促す注射・点鼻薬は「時刻」が重要です
- ●指定時刻からずれると採卵に影響する可能性があります
- ●指示を書面やアプリで確認し、分からなければ当日を待たず連絡してください
採卵前の準備
- ✓鎮静・麻酔を使う場合は飲食制限があります
- ✓アクセサリー、化粧、コンタクトレンズ、ネイルの扱いは施設ごとに異なります
- ✓服用中の薬、アレルギー、過去の麻酔トラブル、風邪症状を伝えます
- ✓採精が同日なら、採取方法と提出時間も確認します
採卵の手順
必要な鎮静・鎮痛を行います
経腟超音波プローブに採卵針を装着し、卵胞液を吸引します
回収した液から卵子を確認します
卵胞が見えていても必ず卵子が得られるとは限らず、採卵数と卵胞数が一致しないことがあります。
痛みと麻酔
| 方法 | 特徴 |
|---|---|
| 無麻酔 | 卵胞数が少ない場合などに選ばれることがある |
| 局所麻酔 | 処置部位の痛みを抑える |
| 静脈鎮静 | 眠気や記憶の曖昧さが残り、運転や重要な判断は避ける |
卵胞数、位置、ご本人の希望、持病、施設方針で選ばれます。
痛みを完全にゼロにできるとは限りませんが、不安や過去の痛みを事前に伝えることで対策を相談できます。
所要時間と帰宅
採卵後は回復室で1〜2時間程度休む案内が一般的です。出血、血圧、痛み、吐き気などを確認し、診察後に帰宅します。
- ×当日の仕事
- ×運転
- ×飲酒
- ×激しい運動
麻酔方法によって付き添いが必要で、公共交通機関を勧めない施設もあります。
帰宅後の過ごし方
軽い下腹部痛や少量出血、お腹の張りは起こり得ます。処方された鎮痛薬を指示どおり使用し、水分・食事は施設の案内に従います。
入浴、性交、運動、仕事復帰の時期は採卵数や症状で変わるため、退院時の説明を優先してください。
すぐに連絡したい症状
出血・感染・OHSSを除外する必要があります
- ●痛みが増す
- ●多量または鮮血の出血
- ●発熱
- ●悪臭のあるおりもの
- ●繰り返す嘔吐
- ●息苦しさ
- ●尿量低下
- ●急な体重増加
- ●強い腹部膨満
夜間連絡先と受診先を確認しておきましょう。
受診・相談の前に整理しておきたいこと
診察では、結論だけでなく「いつから、どのように変化したか」という経過が重要です。最終月経開始日、普段の月経周期、妊活期間、過去の妊娠・流産・出産、手術や持病、現在の薬とサプリメント、これまでの検査・治療結果を、分かる範囲で時系列にまとめてください。パートナーの検査歴や既往歴も、治療方針を考える材料になります。
医師へ聞きたいことは、この4つに分けると整理しやすくなります
- ✓今回分かったこと
- ✓まだ分からないこと
- ✓次に行う検査・治療の目的
- ✓予定変更や受診が必要になる条件
仕事との両立が必要な方は、勤務時間、休みにくい曜日、出張や夜勤の有無も伝えてください。限られた診察時間であっても、判断に必要な情報を共有しやすくなります。
医療情報や治療成績を見るときの注意
妊娠率や流産率などの数字は、年齢、治療法、1周期当たり・採卵当たり・移植当たりなどの分母によって意味が変わります。他院やインターネット上の平均値を、そのまま自分の見通しとして受け取ることはできません。
検査値も一項目だけで結論を出さず、年齢、症状、超音波、精液所見、過去の反応などと合わせて評価します。
この記事は一般的な医療情報を整理したもので、個別の診断や治療指示に代わるものではありません。制度、検査法、薬、費用、診療体制は更新されることがあります。公開時と受診時には、担当医療機関の最新の説明をご確認ください。
よくある質問
まとめ
採卵は日帰りで行われることが多い処置ですが、身体への侵襲と麻酔の影響があります。当日の予定を空け、帰宅方法と緊急連絡先を準備しておくと安心です。
不妊治療や妊娠初期の経過には個人差があります。この記事の情報だけで治療の開始・中止、薬の変更、緊急性を自己判断せず、気になる症状や検査結果は担当医へご相談ください。
東京ウィメンズクリニックへ相談を検討している方へ
治療を始める時期や検査の進め方、仕事との両立について迷っている方は、初診時に現在の状況とご希望をお聞かせください。ご自身の年齢、月経、既往歴、パートナーの状況などを確認しながら、必要な検査や治療の選択肢を整理します。
参考文献・参考サイト
- Guy’s and St Thomas’ NHS Foundation Trust「IVF treatment – Step 2: Egg collection」
https://www.guysandstthomas.nhs.uk/health-information/ivf-treatment/step-2-egg-collection
主な使用箇所:採卵当日の流れ、鎮静後の休憩と帰宅/最終閲覧日:2026年7月24日 - Guy’s and St Thomas’ NHS Foundation Trust「IVF treatment – Risks of IVF」
https://www.guysandstthomas.nhs.uk/health-information/ivf-treatment/risks-ivf
主な使用箇所:採卵・体外受精後の症状と連絡目安/最終閲覧日:2026年7月24日 - ASRM「Prevention of moderate and severe ovarian hyperstimulation syndrome: a guideline」
https://www.asrm.org/practice-guidance/practice-committee-documents/prevention-of-moderate-and-severe-ovarian-hyperstimulation-syndrome-a-guideline-2023/
主な使用箇所:OHSSのリスク評価、症状、予防/最終閲覧日:2026年7月24日 - 日本生殖医学会「生殖医療Q&A 2025」
https://www.jsrm.or.jp/public/document/seishoku_qa_2025.pdf
主な使用箇所:不妊症の基礎、検査、男性因子、生殖補助医療/最終閲覧日:2026年7月24日 - ESHRE「Ovarian stimulation for IVF/ICSI guideline」
https://www.eshre.eu/Guidelines-and-Legal/Guidelines/Guideline-for-ovarian-stimulation
主な使用箇所:卵巣刺激法の選択と安全性/最終閲覧日:2026年7月24日 - 厚生労働省「不妊治療と仕事との両立のために」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_14408.html
主な使用箇所:治療別の通院回数、仕事との日程調整/最終閲覧日:2026年7月24日
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